Complete text -- "詩誌『この場所 ici 』第5号"
27 November
詩誌『この場所 ici 』第5号
詩人佐々木洋一氏には、きっと、私たちの見えないものが明確に見えているはずだ。透過した先にある、波の轟音や、破裂した地の大きな揺れが、見えないからこそ五感で感じ取れているはずだ。だから、きっと、あの悲しみ苦しさや困難が見えている。それが、なまめかしてしょうがない正体だと。この詩を読んで思った。詩誌『この場所 ici 』第5号は、3.11 震災のことを題材に作品を発表している人が多くいる。この詩誌は全国に同人がいるから、震災の受け止め方は人それぞれだと思うが、震災のことを正面から表現する人もいれば、そうではなく全く震災に関する言葉が出てこない作品を書いている人もいる。佐々木洋一氏は、作品「なまめく」で、直接、震災には触れていない。いつもの童話のような人間の生命の蠢きを、つんとした言葉で表現している。しかし、それは表面的なことで、作品の陰に隠れている言葉の心棒は、確実に震災のことに触れていると思う。だから、なまめいたのだと思う。いや、そう思いたい。なんだかわからないけれど、なまめくのだ。
詩「なまめく」の冒頭と最終部を引用させていただく。
日陰に逃げ隠れしながら
たまに意欲をみせる
時に葉陰に潜んでは
ワッと繰り出す
時にガレキの中からツノを出し
じわじわじわじわにじりよる
(中略)
闇の中から遠い星を見上げても
微動だにしない
たとえようがないな
たとえようのない
ひたすら紅のようになまめくことでしか
詩「なまめく」冒頭及び最終部分
02:20:36 |
tansin |
|
TrackBacks
Comments
コメントがありません
Add Comments
トラックバック