Complete text -- "季刊『農民文学』朱夏号 No.294"

07 August

季刊『農民文学』朱夏号 No.294





 季刊『農民文学』朱夏号 No.294 は、2011年7月25日発行であり、東日本大震災地よりの報告が特集として組まれている。その中で、詩人鹿島茂氏は「詩撰集 東日本震災日詩」を掲載している。これは、13編の作品からなる詩の塊である。詩集『山麓の村』の中の詩「野にたいまつを焚け」で「原子力発電所がある野に  たいまつを 焚け」と詠った鹿島氏は、 今回の震災に遭遇し、3月16日から4月8日にかけて日記のように詩を書く続けた。それは、縄文より前の遙か太古から続く人々の生活を奪った地震という巨大な生き物に対する、一人の人間の怒りであり、悔しさであり、悲しさである。とりわけ現代社会の象徴とも言える原子力発電所の事故に対する怒りが強く込められた言葉の達である。



   牛を飼っている六〇代の夫婦
   震災から二週間が経ち
   二〇頭の牛を置いて
   避難出来ないと
   原子力発電所から
   一〇キロの家で売れない牛乳を搾る
   
   この夫婦の心を思うとき
   百姓のかなしさを思うとき

   私の心は張り裂ける
   糞!

            詩「牛」全編

 この怒りは尋常ではない。土にへばりついて生きてきた百姓の悲しさを激しく言い表している。ただ遠くを見つめることではなくて、自分の言葉と視線で自分のこととして、言葉を発している。それにとても感情を動かされた。最後に、詩「土と百姓」全編を紹介する。


   やっぱりナァ
   五〇年前
   あんなに反対運動をしたのに
   偉いさんや会社の重役さんが
   安全だ 安上がりだと言った
   原子力発電所が
   地震と連動して怒っている
 
   今から
   誰が一番困るのだ
   放射能は皆が
   一緒に同じに浴びるが
   人は逃げることができる

   動かぬ土を耕して
   放射能の積もった土を耕して
   食べ物を作る百姓の
   作ったものが売れなくなる
   暮らしが立たなくなる
 
   百姓は死ねと言うのかナ
   口惜しいナァ

             詩「土と百姓」全編


13:09:02 | tansin | | TrackBacks
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