Archive for 07 July 2012

07 July

金子忠政詩集『蛙の域、その先』





 ここに書かれている言葉達は、沈黙する言葉ではけしてない。白日の下に曝された強烈な光を帯びた物達である。しかし、壇上に立って輝きを背にして、暗い影を従え、雄弁に語ろうとは、けっしてしないし。さらに、本心を共通言語で語ろうとはしない。その上さらに言えば、作者は口を膨らまし、肉を恥骨から無理矢理に引き裂く音や、腐乱するのど仏を掬い取る所作に近い声を響かせている。それは、日本語でああることの必然性を失ってしまうことを厭わない。

   ( 獰猛な魚の牙
     私の糸切り歯よ
     見えない雨に打たれるなら
     チラチラと火を吐け! )

             詩「圧倒的な無音を前に」導入部分


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16:27:50 | tansin | No comments | TrackBacks