Complete text -- "西田朋 詩集『雨になる夜』"

12 November

西田朋 詩集『雨になる夜』


■2005.11.12 隣の角田市在住の詩人西田朋氏から詩集『雨になる夜』をいただいた。落ち着いた色のカバー、手に持った時のしっとりとした紙の肌触り、などとても素敵な作りの詩集である。中に収められている26編の作品は、一言で言えば、詩の書きどころを知っているうまさがある。ややもすると、そのうまさが、感に障るのであるが、そんなことは全くなく、ただ「うまいな」と唸ってしまう。詩の雰囲気は、目に見えないものを上手に表現している。それは、寂寥感や空白感だったりする。日常生活で混乱した精神を、すっかりと吹き払う凛とした存在を、言葉で表現することが上手である。神経戦を強いられる現代社会にあって、きもちよい清涼感を感じさせていただいた。一番気に入った冒頭の作品「峠」を紹介させていただく。


   抱えて登ってきた自己喪失は
   東と西に綴じ合わされた
   頂で休憩する

   喪失は解き放され
   節目を生んで
   水の流れを聴いていた

   音は沢を下り
   海に出る道へ続く
   町一つおいた彼方に
   海が広がる

   光と鼓動は
   遠い位置で
   誘い込んで来る
   岐路に立った
   先人達の影を持って

   まだ踏み出せない私は
   ここで透き通る空を
   ただ 見ている


               「峠」全編
07:50:39 | tansin | | TrackBacks
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