Complete text -- "詩誌『霧笛』第2期 第20号"

10 July

詩誌『霧笛』第2期 第20号





 震災で一月以上、家にまともに帰れない日々が続き、本棚が倒れ空中分解したような書籍やCDが山積みになったまま、整理できないでいた。今も、そういう状況に改善はさほど見られないのだが。それで、これまでに送られてきた詩誌や書籍が散乱していて、どこになにがあるのかわからない状況にあった。新しく送られてきたものは、いつも使っている机の上の決まった場所に重ねているのだが、それもどこに行ったのかわからなくなってしまっていた。家人が私の不在の間に段ボールにとりあえず押し込んでしまっていた。家を不在にしていた間に気仙沼から発行されている詩誌『霧笛』第2期第20号が送られてきていた。今日、やっと封を切って読ませていただいている。詩誌『霧笛』として通巻百号の記念号である。百号を記念して色んな方々が文章を寄稿している。恥ずかしながら小生の文章も含まれている。そういえば、千田さんから頼まれて書いた記憶が蘇ってきた。気仙沼は今回の震災で大きなダメージを受けた地域だ。同人の方々は無事だったのだろうか。この号の発行は平成23年2月28日だから、まだ震災の起きる前だ。皆、無事であることを願うばかりだ。

 今回の作品には編集者千田氏の子息だる千田遊人氏が寄稿している。多分、自分の長男と同じ年齢だと思うから、まだ二十歳代の青年である。彼の詩は以前、回生にも掲載させていただいた。感覚がとてもシャープではっと思わせる言葉遣いをする。その感性に羨ましさを感じるほどするどい表現をしてくれる。今度の『霧笛』では、詩「保存」が掲載されている。保存という言葉を見て、すぐにパソコンの保存機能を思い出すが、彼はそういう意味だけでなくもっと広く日常的にも使っている無意識に使っているのではないだろうか、そんなことを思わせる作品である。最後の部分を紹介させていただく。

        (前略)

   今晩はもう終了だ
   朝の臨床を
   思って
   世界は終わりになった
   今年は
   風を妄想しよう
   敵は安全な心得を保持している
   行動しよう

   敢えて
   冠は戴かず

   敵の痩身を騒ぎたてぬうちに
   形象を
   保存して

   まだ見ぬ明日へ

             「保存」後半部分
17:44:22 | tansin | | TrackBacks
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