Complete text -- "佐々木洋一詩集『ここ、あそこ』"

16 January

佐々木洋一詩集『ここ、あそこ』



 この世界は、ただ一つの現実が覆っている。そこから抜け出すことはできない。だから、安心して仕事ができる。安心して、家でテレビを見ることができる。たった一つの現実が綺麗に世の中を整理してくれる。その上に、人々の生活が動いている。悲しみや喜びは、一つの現実の中で一瞬の時間の中で起き上がったり、倒れたりしている。喜怒哀楽が裏返しにならずに正直に生まれる。

 佐々木洋一の詩の世界には、裏返ることのない現実が存在する。馬鹿正直な、生き方を容認する空気が存在する。そうでなければ、そんなに感情を凝縮することはできない、空気のような言葉は生まれない。存在感のある言葉が動いたりはしない。
 現実を肯定する力が、言葉の力となって、心に届いてくる。

   ここを美しく、というには無理がある

   じゃこうの臭いをたぐり
   あそこを美しく、ということには期待が持てる

   さらば、ここを
   こんにちは、あそこを

   いつかくらくらして、しぼられ、めまいして、とめどなく、ゆらゆ
    らして、こおどりして、しめらせて、さらに、さらさらして、さ
    らに、しらじらと、さらにぐらぐらして、ぞろぞろして

          「あそこを、美しく」前半部分


15:24:15 | tansin | | TrackBacks
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