Complete text -- "詩誌『tab』第17号"
26 July
詩誌『tab』第17号
詩人長尾高弘氏よりメール便で『tab』第17号が今日届いた。首都圏で活躍している詩人で交流をさせていただいている数少ない詩人の一人だ。
今号は詩が7作に散文が3作だ。詩では石川和広氏の作品「ふたつの歌」に惹かれるものがあった。なにげない日常のことを書いた詩であるが、人間なら誰しも経験したことがあると思うのだが、さりげないとこから人生が変わってゆく、つまり次元がずれることが書かれている。過去の経験を書いているので現実的でもある。中間の2連を引用させていただきます。
雨の中で傘を手に踊り歌うのが「雨に唄えば」
四つの国の手で引き裂かれたウィーンで
追っ手から地下道を渡って逃げる「第三の男」
自転車に乗りながら
必死にその歌を吹きながら逃げたんだ どこからかここからか
ふたつの歌が風景の中で
自分の肉体と奇妙に合成する つくりものの
生ものの 私
そういうとき歌だって歌った 暗闇でドキドキして
スピードと過ぎ去る人と木々と景色と
それは生きている世界、恐れている世界
その向こうを夢見て走る
「ふたつの歌」中間部分
長尾高弘氏は、「支え」という彼にしてはユーモアをそんなに多く含んでいない詩作品を発表している。人間の最後に残る生きるという力をさりげない言葉で表現している。最後の1連の部分を引用させていただきます。
本人はすぐに帰ってくるつもりだったらしい。
しかし、ベッドに寝かされているうちに歩けなくなり、
認知症も見つかって、
一人暮らしに戻すわけにはいかない。
と医師に宣告され、
老人介護施設に移った。
もう二度と家には帰らないだろう。
音楽から引き離されて。
聴きたいと言い出すかと思いきや、
そんな気配はどうもない。
楽しみは食べること。
周囲に居丈高に接するのは、
自分は他人とは違う
という思いの名残なのだろう。
その思いが心の支えなのか。
「支え」後半部分
15:30:25 |
tansin |
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