Complete text -- "詩誌『葦』第29号"

21 June

詩誌『葦』第29号


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 詩誌『葦』は三重県から出ている詩誌です。この詩誌の同人である武藤ゆかりさんと交流があり、贈ってただきました。
 武藤さんは、「官能」という名の作品を発表してます。そう、題名のとおり、とても感受性豊かな作品です。自由と感じることが生命感に繋がり、それは自然に対してとても素直に溶け込まなければ受け止めることができない繊細な感覚だったりします。そして自分が確かに感じたことは、誰にも否定することのできない強い存在感となっています。生きていることをとても肯定的に捉えたさわやかな作品です。
 冒頭の一連を引用させていただきます。

   けやき並木を仰ぎながら
   道の果てまで歩こうと
   ついに自由になりました
   薄紫の富士の揺れる
   棚の下に休もうと
   やっと自由になりました
   風は五月の萌える匂い
   草の根の震えも聞こえます

     (後略)

          「官能」第一連
 その他、清水紀衣さんの「黒板」がおもしろかったです。自分と言う存在が他人との関わりのなかで生まれ続けていることをとてもユニークに表現しています。自分が他人にどう見られているのか、とても気になることですが、自分自身ではどうにもできない自分と言う無数の存在がそこいらじゅうに転がっています。それを何とかしたいと思いながら、生まれ変わることもできない不自由な自分に小さな願い事を添えて、生きると言うことに前向きになる姿勢が好きです。
 作者に失礼かもしれませんが、全文を引用させていたきます。

   私の顔に落書きをして
   私の顔をじっとにらんで
   私の顔を時々叩く

   みんな
   私の顔の落書きを 消すのを嫌がるし
   書くことだって
   嫌がったりもする


   それでも
   私は みんなが好き
   がんばっている
   みんなが好き

   だから 落書きを許してあげる
   にらまれても 許してあげる
   叩かれても 許してあげる

   だから
   ひとつだけ お願いを聞いて
   
   たまには
   私をきれいにしてね


          「黒板」全編
07:33:57 | tansin | | TrackBacks
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