Complete text -- "池田満寿夫の版画"

11 January

池田満寿夫の版画



 昨年暮、京都と奈良へ仏像を見るために妻と旅行をしました。京都は修学旅行などの団体旅行で行ったことはありましたが、個人の旅行で訪れたことはなかったので、妻中心の旅行とはいえ、自由気儘に街を見ることができました。
 仏像は初めて訪れた奈良斑鳩の法隆寺で仰ぎ見た百済観音像の天にも昇るような曲線の美しさに圧倒されました。天平の時代の美意識は、現代にあっても色あせることは全くなく、人類は自然から多くのことを学んでいますが、人間が作ったものに傲慢になってはいけないとつくづく思った次第です。常に、畏敬の念を持つことで謙虚にあるべきなのでしょう。それが大いなる存在である自然に対する、限りある命をもつ人間の等身大の態度であるはずです。
 今回の旅行では、三十三間堂の建物の中で池田満寿夫の版画展(正式名は「池田満寿夫の版画」)のポスターを偶然に見つけ、幸い開催期間中だったので、京都国立近代美術館での展覧会を見ることができたことが最大の感動でした。
 私の美術に対する興味の多くは、銅版画に向かっています。それは、銅版画の一つ一つの技法に自分の感性が引き込まれるような感覚が存在するからです。引っ掻く、削る、腐食させる、写し取る、といった行為がだた描くということと違った、もっと生理的な部分で親和性を有しているのです。池田満寿夫は、性欲という生理を、銅版を傷つけることで、自己の欲求を昇華させることとして表現したのではないでしょうか。とにかく壮観です。
 池田満寿夫の長年のパートナーであった佐藤陽子氏が、池田満寿夫が所蔵していた初期から晩年までの版画作品をすべてこの京都国立近代美術館に寄贈したことは驚きでした。
16:04:23 | tansin | | TrackBacks
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