Archive for October 2012

21 October

詩の降り注ぐ場所『コールサック』73号




 茨城の東海村に住む詩人であり写真家でもある武藤ゆかりさんは、東日本大震災後、一貫して地震の恐ろしさや放射能の恐怖を語り継いでいる。震災直後は、直接的に、比喩など使わず、ありのままに語り繋いだ叙事詩のような態様で言葉を紡いできたが、ここにきてあれから1年半が過ぎ、幾分、心臓の鼓動が落ち着いてきたようだ。そして、彼女の属している詩の団体コールサック社から出ている膨大な書物『コールサック』第73号が届いた。膨大と書いたのは、この分厚い雑誌に57人もの詩人が詩を載せている。そのほかに、詩人論、エッセイ、書評が数多く掲載されている。この量で年3回発行とは恐れ入った。商業雑誌ではなく、詩人による詩人のための詩表現に依った雑誌というとところだろうか、いわゆる詩壇的な集合体を形作らない姿勢は、『現代詩手帖』や『詩と思想』とは完全に一線を画する。

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07 October

個人誌『風都市』第24号




 私は、ここしばらく美しいものを見たいと思わなくなっている。しかし、この世の中から逃げ出すわけにもゆかず、綺麗なものや美しいものは、できるかぎり時間の移ろいが、取り払ってくれればと願っている。

 美しいもの、綺麗なものとは、人間の感情や意思や考えに通じる。それすら、必要のないものと思っている。私がそんな気持ちで過ごしている時に、瀬崎祐氏の個人誌『風都市』第24号が届いた。

 瀬崎氏の詩2篇はとても美しい。アンビバレント名気持ちが湧いてきた。しかし、それは、私が願っていた、美醜をすべてを取り去った後の世界のように、ただただ何もない時間が流れている世界だった。前者の「美」と後者の「美」では、人を惑わす人掠いのような、感覚を麻痺させる「美しさ」と、その場に立ち尽くそうと必死になって自分を守とろうとする自立する「美しさ」と言う点で決定的に違っている。

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