Archive for July 2006

22 July

佐藤幸雄『めろめろ迷路』



 佐藤幸雄氏の作品は、一関jから出ている『地層』でよく目にすることがあった。そして、懇意にさせていただいている関茂氏が同人として活躍している『詩想』でもその名を拝見することがあった。一度、回生で詩の朗読会を行ったときに、聴きに来ていただいたこともあった。だから、そんなに知らない詩人ではないという思いがある。しかし、ここに改めて詩集を読むと、如何に彼の詩のことを知らなすぎたのかということを痛感した。
 これが最初の詩集出るとは意外であったが、それだけにこの『めろめろ迷路』で、彼の詩業のおおよそがわかるということなのだろう。第一印象は、心象を直接的な言葉で表現しようとする思いが強いな、ということである。とても、積極的である。饒舌といってもいいかもしれない。それは、詩集最後の作品「丘線の果て」を読むと強く感じる。この長編詩から一部を引用しよう。
 
   ・・・前略・・・
   
 距離だけが
 絶え間なく希望のようにつらなる
 長い独白の重なりが
 何一つ成就することはない だからこそ
 地平を求め 誰一人信じない虚像の姿を捧げて
 今日を刻む
 この世界のあらゆる物と物象に
 きらめく固有の名をあてがおう
 陽や砂丘 石やかげろうの映像たち
 夥しく湧き起こる存在する物らの声
 指標ともならない未明の広がりの後ろから
 光明のヴェールを通して
 信仰のように燃え上がる
 彼らの叫びは決して破壊することができない
 だから 身体は安住の地を得ることもない
 
   ・・・後略・・・
             「丘線の果て」部分
             

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12:24:00 | tansin | No comments | TrackBacks